最近ショックなことがありました。
3年もデッサンも絵も描き続けている人が、久しぶりに「球」のデッサンを描いたのですが、上手く描けませんでした。デッサンも時々していたし、絵も描き続けていたので、私はまったくの想定外でした。もちろん、本人もショックでしょうね。どこに盲点があったのでしょうか?
一つ出来たら次に進む、という検定方式で行っていますので、課題を合格したら再び描きません。次々へ課題を続けて、技術が積み上げって行くうちは良いのですが、間が空いて、忘れてしまえば元に戻ってしまうのです。
でも、絵を描くのも基礎が必要なはずで、常に基礎を考えて描いていたら、忘れないのでは?と思えます。しかし、アドバイスを鵜呑みにし自ら考えて描いていないならば、それは反復にはなりません。この2つの盲点をすり抜けた、アンラッキーな、しかし絵を長く習っている人の陥りがちな事例だと思います。
では、基礎をしっかり身に付けるにはどうしたらいいのでしょうか?
実践で、反復することです。どんなに知識を持っていても、自分が絵を描きながら、基礎を実感するのでなければ、絵には活かせません。繰り返すことで、頭ではなく、しっかり身に備わります。
自分自身で考え、確認することです。どんなに教えてもらっても、自分が考えて納得するのでなければ、絵には活かせません。例え上達しても、繰り返すことが必要です。基礎とは関係なさそうな、高度な課題に取りくんだとしても、昔行った基礎が頭に浮かんで、共通点を納得することは良くあります。むしろ、共通点が頭に浮かばないものは、基礎と言えるものではないと思います。
人間、記憶は薄れて行きますし、運動能力は衰えていくのが、自然な姿です。それに抗うには、実践を繰り返し、確認を続けるしかありません。そうであっても、大事なところをどこか漏らしてしまい失敗するということは、私も何度も経験しています。だから、基礎をマスターした!とは、何時まで経っても言えないものと思えるのです。
「球」を描くではなく、「球」を投げる分野でも、おそらく同じことが言えるはずです。
しかしフィジカルな世界は、自分に帰ってくる結果については明らかで、ごまかしがきかない世界のように思います。絵もフィジカルな側面が無い訳ではないのですが、どちらかと言えば、基礎についてはテクニカルなところばかり強調されているようです。昨今のネット事情でも、方法については、いくらでも直ぐに知ることが出来ます。テクニックやコツを、それも丁寧に優しく教えてくれることが、絵にとって必要だと思っている方が多いかも知れません。
しかし「球」を投げ方をいくら知っていても、実際に投げて見なければ、投げられるようにはならない。絵も描き方をいくら知っていても、実際に描いて見なければ、描けるようにはならない。むしろ、実践の中で、いろいろな種類の、形、色、光、立体感、質感などの歯車が噛み合って来るまで、粘り強く取り組んでいくことが必要です。基礎を疎かにし、努力を軽んじて、効率の名のもとに切り捨てる。そのような時代の潮流とも、残念ながら真逆な事実かも知れません。ですから、出来ないから直ぐに無理!ではなく、ご自身への長期投資、後で大儲けしてやると思って、腰を据えて頑張っていただければ幸いです。