迫力のある、タコのデッサンです。触手や吸盤が曲線タッチで描かれていて、タコの力強さを盛り上げています。作者が力を込めて、タッチを一つ一つ「ぐりぐり」と描いていった感触が伝わってくるようです。そして作者は、このような描き方を楽しく感じていることも、伝わってきます。

タッチというものは、独特の美術的表現です。タッチによって、面を感じたり、立体感が更に盛り上がったり、質感が増したりするのですが、視覚的にはそのようなものは存在しない、あくまで面や立体感や質を「感じる」ことで生まれてきます。まさに、触わる=タッチする表現です。

「触るように感じる」ということは、作者の内側から生まれてくる感覚、技術から生まれるものではありません。これが強く表れるデッサンは、良いデッサンになります。良いデッサンの力強さは、タコの生命力であり、作者の力強さでもあります。