線とは、何でしょうか?
私たちは、マンガやアニメを楽しんでいます。マンガやアニメは、線で描かれていることが多いですね。
子どもの頃から慣れ親しんでいる線のことを、改めて考えてみたいと思います。

実は、現実世界に、線というものは存在しません。物と物の境目があるだけです。それを、アウトラインとして簡略化して、線で表現しているのです。表現ということですから、意図的に誇張しているということです。あらためて、デッサンを描いてみると、そのことがはっきりわかります。はじめは、アウトラインのアタリを取って、陰影をつけていくうちに、線が消えていくことに気が付くでしょう。デッサンが出来上がることろには、線はすっかり、光や立体感に取って代わられます。

「丸に点3つ」で幼児も顔と認識するように、線で描かれた顔は、「アイコン」として当たり前に認識されています。そして日本では、ひき目、かぎ鼻の源氏物語絵巻の例でも明らかなように、伝統的にそのような表現に慣れ親しんでいます。このような環境では、線というものは当たり前になり過ぎて、線がどうして出来てきたか?ということには意識が向きにくくなります。線は、中身のアウトラインなのです。

アウトラインに話を戻します。線は、中身のアウトラインということですが、中身は立体です。人間の場合、裸に服を着た姿です。更に裸の肉体とは、骨と筋肉の総体です。デッサンの場合、「骨→肉→服」と順番に意識しながら、線を描きます。アウトラインだけではなく、中身の成り立ち=構造も意識して、線にしていくことで、正確な人間が描けるわけです。

しかし私たちは、普段からそのような見方はしません。マンガを真似て、落書きに慣れ親しんできた方も多いでしょう。大人になっても、マンガイラストを投稿したり、漫画家を目指す方も多いと思います。そのような人は、当然のように、正確な人間の形を描いていきたいと思うはずです。しかし、ここまで、感覚的に、なんとなく線を引いてきたところに、いきなり「骨→肉→服」という高難度なハードルが登場することになります。私事で恐縮ですが、妻も長年マンガを描いていたのですが、2次元世界でなれた認識を、「骨→肉→服」という3次元世界に変換するのに、時間がかかりました。

線は、中身のアウトライン、中身を意識することが大切ということです。マンガ・イラスト初心者の方は、上達したいならば、そのような認識の転換を求められます。それは簡単なことではありませんので、あらかじめご了承ください。