やはり、絵というものは、人に見てもらって表現したものを伝えるものです。
だからデッサンは、人に伝えるための方法や技術である、ということが出来ます。
とてもシンプルな答えです。長年掛かって、やっと行き着きました。

絵は視覚言語である、という言い方があります。
分かりやすい例えとして、我々は言語をどのように習得していくでしょうか?子どもの時期から、言葉を覚え、文字を習い、文章を練習し、長い時間を掛けて習っていきます。その後、仕事でも研究でも、人に伝えるために色々と苦労して、文章で表現するようになります。視覚言語には、言葉を覚え、文字を習い、文章で表現するような、視覚的な技術や方法が含まれています。

ですから、絵を描くことは、簡単ではない。
デッサンは、直ぐに出来るものではない。
それなりに時間が掛かり、色々な積み上げが必要です。
デッサンはプロを目指す人だけが行うもの、という風評もありました。なるほど、人に伝えるということはそれなりに難しく、それは専門家が目指すことだと言い方は不自然では有りません。

では、専門でなければ、デッサンは必要ではないのでしょうか?
絵は、自分のために描いても良いし、どなたにとってもデッサンが必要なものだと、強弁は出来ません。実際、デッサンが要らないという人もいます。難しさに萎縮したり、「絵のためのデッサン」が「デッサンのためのデッサン」になり、本末転倒してしまうこともあります。しかし、やはり絵は、人に見てもらいたいと思うはずです。人に見てもらう限りは、上手く伝わってほしいと思うはずです。その場合は、「カタコト言葉」では満足できないはず。そうである限り、デッサンは絵にとって必要なもの、と考えて構わないと思います。