写真をお手本にすると、デッサンの難易度はかなり下がります。
写真は平面だから2次元(X軸・Y軸)、実物は立体だから3次元(X軸・Y軸・Z軸)、実物は1次元分多いわけですから難しいわけです。Z軸(奥行き)にはパース(遠近感)が付きますし、自分が体を動かすだけでモチーフの見える角度も変わります。つまり、写真は立体感や空間がある程度省略されたものになっている。立体感に注目して描く、空間を感じながら描く、頭の中に立体感を認識する、これらはデッサンではかなり重要なことなのですが、写真でそれを勉強することは難しいことになります。

しかし動きのあるもの、動物や赤ちゃんなど、止まってくれと言っても聞いてくれないので、写真を撮って、それを資料として描いたりすることはあります。旅の思い出を、写真をもとにして風景画を描かれる方も多い。だから写真を利用する人も多くなっていると思います。全般的に、スマートフォンやPCなど小箱に、写真や映像が幾らでも詰まっているのですから、我々は立体感や空間について意識しなくなる傾向があるかも知れません。それほど身近になり、あり触れた存在になってきた写真や映像ですが、写真の専門家、映像の専門家もそれぞれいらっしゃるわけですし、絵には絵の本分や持ち味もあるということを、それらと区別するべきだと思います。絵の本分は、絵画空間、2次元に描かれた絵画独特の空間ですが、詳しくは別記します。

リンゴを描く場合も、写真を撮って描くと、割と簡単に「写せる」のです。しかし手触り、匂い、噛んだ時の味や触感など、様々なものを感じながらリアルを追求することは出来なくなります。リアルを感じるということが、制作者にとってどれだけの重みをもつか?それが最終的な選択肢となるでしょう。私の考えとしては、デッサンは出来るだけ実物を見て描き、感覚の引き出しを増やした方が良いと思っていますが。