初心者は「あんなことやこんなこと出来たらいいな!」とか希望に胸を膨らませています。実際行ってみて上手く行かないと、「全然違う!」とか、果ては「才能無いのかも、、」とマイナス感情に苛まれたり、そのギャップが激しいのも初心者の特徴です。

経験が無い、つまり何が出来るか出来ないか判らないわけです。現実になる前は、全ては可能性です。「絶対出来る!」と思ったり、万能感を持ってしまうのも、仕方のないことかもしれません。自意識の高い人ほど、そうなりがちです。自意識が高いということは、それだけモティベーションも高いということでもあります。しかしそれだけに、理想と現実のギャップに愕然としがちです。だから、始めた時が一番不安定かもしれません。そのしんどさは、私も経験しました。中学生の頃、「巨匠ノート」を書いていました。笑っちゃいますが、そうやって自分を鼓舞していたようです。

今ではすっかり落ち着きましたが、かつてプロ志望の方が30人ほどいらっしゃったことがありました。しかし熱くなっていた状態が、急に冷めたという感じで、7割ぐらいが直ぐに来なくなりました。プロは厳しいとか説教した覚えは有りませんが、あきらめの速さに驚きました。コツコツ練習していくことに耐えられなかっただけではなく、やはり理想と現実のギャップが身に染みたのだと思います。

現実には、いつもぶつかります。特に自分についての現実は、受け止め辛い。葛藤は、いつものことです。しかし、現実に突き当たっても、それを間違いや失敗と捉えるべきでは無いと思っています。初めてのことで、それが上手く行くことは稀です。稀に上手く行くこと以外を、間違いや失敗と捉えるのは、極端ですから。理想と現実にギャップを少しずつ受け止め、クールダウンした時が、本当のスタートラインだと思います。

デッサンにも、クールな面があります。何が問題だったか分析したり、比較したりして、自分の力で作品を判断して改良していく力とも言えます。現実に照らし合わせて判断することで、具体的に方法や対策を立てるわけですが、それは現実をクールに観察するという文化があるからだと思います。芸術は爆発だ!美術はパッションだ!というイメージをお持ちの方が多いと思うのですが、実はそれを実現するためには、クールさやバランス感覚が必要だったりします。

もちろん、簡単な現実も、楽な現実もありません。同様に、デッサンも簡単でも楽でもありません。自分の力で作品を判断して、描いたものを改良していく力は、個人力です。気付き、自覚の世界ですので、技術を覚えるより時間を要するかもしれません。描き手の主体がはっきりすることで初めて、描き手の基準、比較力、判断力、想像力が引き出されていきます。これは簡単では有りませんが、いつかは自分の力で、自分の作品を作る!ことが出来る世界です。

それに対して、ネットに氾濫している「早く簡単に上手くなる」世界は、その世界と逆行しています。ほろ酔いの人々を誘う、夜の街のネオンサインがごとき美辞麗句、内容を判別できない方はその美辞麗句に抗いがたいし、デッサンが難しいという現実が輪をかけて、デッサンをしてみたいと思っている人々を、デッサンの本当から遠ざける。しかし、このような「焼き畑」が続けば、美術の土壌は貧しくなってしまうのではないかと思って、憤っております。

ここでは現実=リアル、クールというキーワードが繰り返されましたが、デッサンにはそのような面があるということなのです。デッサンをこれから勉強したい皆様、ステイ・クールです。セールス・トークには、賢明なご判断を!