習うのは、足したいから。
足したいのは、足りないから。
足りないものとは、経験のないもの。
経験のないものが、出来ないことは当然です。

しかし出来ないことを恥ずかしく思い、躊躇してしまう。
出来ない様を人に見せるのは、プライドが許さない。
これが初心者が抱える最大のジレンマです。

「奥様方、今度のデッサン会、出てみませんか?」
「いや~先生、まだまだ下手ですから、上手くなってから出ます。」
「あの~、上手くなるには出た方がいいですよ。練習する良い機会ですよ。」
『ぎゃははは!」(奥様たち、すっかり違う話をして盛り上げっている。)
「奥様、聞いてますか?お~い!」
典型的な一例ですが、奥様達の強さとスルー力には、なかなか歯が立ちません。

通常習い事では、アドバイスする側は改善点を見つけ、改善方法を示し、本人が納得し練習するという、経過をたどります。改善点とは、ずばり上手く行かないポイントです。上手くなるということは、出来ないところを出来るようにすること。出来るようになるためには、出来ないことを自分で認めることです。ご本人がそのことを納得するのは、それほど簡単ではない。これは現場では、とてもある!ある!な話なのです。

「上手くならないと描かないVS描かないと上手くならない」、これは「生活改善したくないけれど痩せたいVS生活改善しないと痩せない」という、ダイエットと同じような深層心理に基づいた強烈なジレンマです。私事ですが、妻のダイエット半生もすさまじい!お手軽な方法は全て経験済み、家の中は当時流行った健康器具がゴロゴロ、、、涙がちょちょ切れます。ダイエットもお金儲けも、絵の上達も、簡単に出来る方法はありません。だから、自分を出さないで「勝てる勝負しかしない。」ということは、何も得られないことに等しいのです。同じ泣くなら、汗かき、べそかき、ワンツー、ワンツー、です。

ついでに、状況をややこしくするケースを二つ上げます。
一つは、正当化です。それも、出来ない理由が自分以外にある、人のせいで出来ないとなってしまうと、再び改善点に向き合うには大変な時間がかかります。気付きは上達にとって不可欠ですが、気付きを遅れさせ、遠回りしてしまいます。
もう一つは、褒めるだけ、褒められるだけの環境です。褒めて伸ばすこと自体に、反対しているわけではありません。出来ることも出来ないことも、バランスよく受け止められるようにするべきです。初心者の場合、ご本人が出来ないことにぶつかるのは直ぐですので、このような環境下では、逆に挫折感が大きくなります。また、器用な人ほど、万能感に陥るケースが多い。万能感に一旦囚われると、回避する力も強くなります。それこそ全力で、出来ないことから逃げます。褒めるだけ、褒められるだけという環境は、バランスを欠くものです。長い目では、可能性を摘むことになると思います。

たかがはじめの一歩ですが、されど初心者にとっては一大事です。ここをどのように踏まえるか、それがその後大きく影響します。プライドを抑え、正直にストレートに向き合う、初心者の方に是非お願いしたいことです。今は単なる通過地点、今の自分は成長過程、描けなくともかっこ悪くない!いつか来た道、と振り返れる時が必ず来ます。