強い線でいきなり描いて、消しゴムでごしごし直ぐに消す。また描いてごしごし、そんな感じでなかなか描き進まない姿を見かけます。デッサン初心者の方に、割とよく見かけます。描いてごしごしの間隔が、だんだん短くなってくると要注意。イライラして来ている証拠です。周りの人は、フォローを入れることが出来るように、消しゴムの音には注意を払っておいた方が良さそうです。

なぜ?このような傾向があるのか、おそらく我々が普段から書いているものが、文字だからです。幼いころから、ずーっと慣れ親しんだ文字の書き方は、強く書く、いきなり書く、間違えたらすかさず消す、というものです。「薄く書いちゃダメ!」と国語の授業で言われ続けるわけですから、そういう描き方が我々には染みついているのも無理からぬ話です。

それに対して、デッサンでは、薄く描いても良いのです。むしろ強弱があった方が良い。また下描きもします。いきなり描くことの方が少ない。描き重ねることも、普通にあります。デッサンでは、色々な種類の鉛筆を重ね、油絵水彩でも色を重ねます。間違いを消す方法も違います。字は全部消す、絵は直した後で部分を消す。書道と絵では、それら文化が全く違います。絵の描き方を身に着けていくには、まさに「習うよりは慣れろ」式に、繰り返し運筆練習することをお勧めします。

直した後で部分を消す、ここにはデッサンの目的が隠れています。「比べる」という目的です。形を正確に描くには、先に描いた線が、目標とどれだけずれているか判断して、次の線を描いていくことになります。間違えた!と思ってそこで消してしまったら、「比較対象」まで消してしまうことになるのです。特に、明暗まで付けている場合は、消した部分だけが真っ白になってしまって、線だけでなく周りと同じ暗さになるまで、消した部分をもう一度塗り直さなければならない、3度手間ぐらいめんどくさい。ちなみに、石膏デッサンで「目からビームが出ている!」はとても良くある失敗例ですが、目が上手く描けない(目は一番といって良いぐらい難しい部分です。)ので消したという理由で生まれます。

間違えたら、焦ったり、失望したりというマイナス感情が出てくるのは、自然なことです。デッサンを繰り返しているうちに、直すことは当たり前になり感情は動かなくなりますが、当たり前になるにもそれなりに時間が掛かります。それまではとにかく、間違えた!と思ったら、ひと呼吸おいて見る、ということをお勧めします。イライラしたり、焦ったりするのを回避する方法は、やはりメンタルによるところが大きいと思います。急がば回れ、ですね。