手で培われる感覚を大切にしたいからです。目で見て判断し、手で描画道具を使いこなし、頭で動きや空間をイメージする、絵を描くことは自分の身体をたくさん使います。身体の総合的な働きの上て成り立っているのだから、目や手に近い描き方ほど、リアルな感覚が身に付くだろうという考え方です。運動神経や認知機能に関わる実感というものは、リアルな環境ほど生まれやすいと思います。

次の理由として、鉛筆や紙は安価で、いつでもだれでも気軽に使えるものだからです。描画ツールや3Dソフトは高価で、使いこなすのにもそれなりの時間が掛かります。汎用性に於いて、鉛筆や紙の右に出るものはありません。

もう一つは、手描きを直すことが、感覚を鍛えるために最適だと思うからです。手描きを直すのは、とても大変です。対して、描画ツールや3Dソフトなどは、拡大縮小、やり直し、レイヤー、コピーなど描き込みが、圧倒的に便利です。しかし大変なほど、慎重に吟味したり、見比べたり、良し悪しを判断する力が培われます。不便な利点ですが、判断力というものは絵を描いて行くためには不可欠です。

そのような理由で、手で描くことに拘っていますし、それが大切であることは信じ続けていこうと思います。