当方に通っていらっしゃる、年配の素敵な女性がいます。朗らかで、正直で、信仰にも篤い彼女。
油絵をもっと上手に描きたいという目的で、デッサンにチャレンジしています。しかし、苦労もあり気付きもあり、山あり谷ありです。その一端をご紹介します。

プレッシャーを感じると慌てる、上手くいかないと余計にプレッシャーを感じて慌てる、今回もやればやるほど冷静さを失い、ドツボにハマってしまいました。「どうしよう?」と、こちらをじっと見ています、、、。「とにかく視ましょう。慌てることは、仕方がないこととして認めましょう。慌てながらでもいいから、とにかく視ましょう。」と申し上げました。「慌てることは、仕方がないこととして認めましょう。」が効いたようです。視ているうちに自然に落ち着いて、上手くいきました。落ち着けない人に「落ち着いて!落ち着いて!」は役に立たない。頑張れない人に「頑張れ!」が重荷になるように。

デッサンのことをお友達に話した時、「そんなこと、私だったら一生出来ん。」とさぞ辛い修行のように言われたそうです。お友達は、彼女の思いや、課題の内容を理解していないでしょうが、それでデッサンすることが余計に辛くなったそうです。そこでは彼女は「自分と他人は違う。自分が自分のためにやるんだ。」と気持ちを切り替えたようです。

彼女は、信仰の悩みを打ち明けてくれることもあります。神のことで、信仰を共にする方と議論になり、ギクシャクしたとのことです。「神仏を、我々人間がわかるという方がおかしい。答えのわからないことも、必要な場合があるのでは?」と答えると、とてもスッキリした顔をなさっていました。次にお会いした時、「デッサンするのが嫌じゃなくなった。」とおっしゃる。「良く考えると、自分のことも周りのこともわからないことだらけだ。だから、分かった振りをするのを辞めた。」「それから、良く見よう、下手なのは仕方がない。気にしないで描こうと思えるようになった。」大転換です。すごい!ちなみに、私はスキンヘッドですが、別にお坊さんではありません。

彼女を通して、私もいろいろと気付かされることがあります。ここに書いたことは、技術というよりメンタルの問題なのですが、絵はその人の内面が正直に表れるもの、そうなるのは仕方がないかも知れません。しかし、それが可能になったのは、彼女がフランクな性格で、気持ちを正直に伝えてくれたから、ということも大きい。

教室にメンタルケアの必要な方が、何人も来られたのですが、正直に言ってくれなかったり、後になって教えてくれたりするケースがほとんどで、私もご当人も上手く噛み合わず、苦労した経験がありました。息子が発達障害であることを私は公開していますが、そのことを理解してもらった方が、周りも彼も困ることが少ないだろうという考えです。

絵はコミュニケーション、気持ちのやり取りが要ります。言いにくいことを言う、ちょっぴりの勇気も。